イタリアンフェアを控え、一度今回のイタリアの旅を振り返ります。
南部最大の都市、ナポリ。
もはやイタリアの印象は料理でも、ファッションでもなくなりました。
蔓延する空気の匂い、街中のゴミや汚れ、ギラギラした人々の目。
ただ歩くだけでこんなにドキドキする場所はここをおいて他にない。
朝の7時。嵐が去った後のような風景がナポリの日常。
仕入れに向かう前、イヤでも気持ちが引き締まります。
強くいないとたちまちうちのめされてしまうような怖さ。
半ば無意識的に通り過ぎることが多くなった外国の風景。
それでも足が止まり、カメラを構えてしまう景色がここにはあると思う。
イギリス、イタリア含め、非日常を一番強く意識するのもナポリ。
怖さ、感動、一つ一つの強い刺激に浮かれるか、悪酔いするかは自分次第。
食に明るい人にはハナで笑われるかもしれませんが、
ピザよりパスタよりコーヒーより、ジェラートが一番うまい。
クスリ入ってるのかってくらいの中毒性。
一日が終わった後の、たった3ユーロの贅沢なご褒美。
旅の始まりはここ、ボローニャから。
"No vintage in Bologna"
あるショップの店員からカタコトの英語で言われた一言。
いや、絶対何かある。イタリア人のウソには踊らされない。
回廊のアーチは単純に建築的なエレメントに留まらず、
この街自体を象徴するエッセンスになっています。
暑い季節は日差しから、寒い季節は雨から人々を守る。
今は石製だけど、一カ所だけ昔のまま木造のアーチがあるそう。
街を歩けば始まる、光と影のゲーム。
アーチの下で街に同化したカラーのレザージャケット。
褪せた細身のチノ。ホワイトベースのアシックス。
頭の中の理想がそのまま現実になったようなスタイル。
レザージャケットは数着展開する予定です。
「Scusi」「...」「Scusi」「...」「....Scusi!」
「Ahh!?」
「May I take your pictu..」
「NO!」
怒りに満ちていた推定40代のイタリアン。
人のスナップは許可をとったらまずNG出ます。僕は。
画像が手に入らないだけでなく、気持ちが折れる。
いくら悪趣味と言われようと隠し撮りは不可避。
移民、観光客を含めて、イタリアには外国人が多い。
だけどボローニャはイタリア人の街。
ナポリとは対照的な、絵に描かれたイタリアにいる気分。
ディーラー曰く、ボローニャの女性は何かが世界一だそう。
「Sexual meaning?」「Yes(ニヤリ)」
誰か知っていたら教えてください。
この店のためにはるばる遠くまで来た、
半ば記念として手に入れた一着。
モダンイタリアンとは異なる、オールドスタイル。
文字通りの力強さを持った服が少ないのもまたイタリア。
東欧のような風景のローマ・テヴェレ川と、
駅から橋に続く春らしい花のアーチ。
km単位のストリートマーケットに向かう途中、
ほんの少しの観光気分。
1ユーロ、3ユーロ、5ユーロ・・・
それだけ見れば天国のような場所でも、
半日かけて手に入るのはたった数点の地獄。
チャンスがあるのに活かせないもどかしさ。
「俺はこんなところまで来て何をしてるんだ・・」
何か入ってんの?ってほど軽いキャリーが
こういう時ほど途方もなく重たく感じる。
誰もが知っている有名な建築、観光客が通らないような裏道、
大通りに、街角に、ここにある全てが長い歴史を語っています。
観光客、交通量、店の数、どれをとっても他とは比較にならない。
何度訪れても魅了されてしまう街、ローマ。
レストラン、ジェラテリアに混じり、少しだけ古着屋が並ぶ通りで、
オーバーフィットな今風のスタイルにrossaが映える女の子。
コンバースでもナイキでもない、レトロなディアドラにひかれて。
帰りの電車まで空いた1時間で、友達に教えてもらったジェラテリアを探して。
おじさんが一人ジェラートのために遠くまで出向き、長い列に並ぶという行為に
いたたまれなくなりましたが、恥ずかしさをしのんで食べる価値ありました。
電車からトスカーナの風景。
イタリアは電車の乗り方がイギリスに比べて割と難しい。
一度ボローニャに行こうとしてローマ直行便に乗ってしまい、
ほぼ一日無駄にするという苦い経験をしました。
新大阪行きの新幹線なら普通は静岡止まるだろって思う。
訪問したウェアハウスが見当違いで、そこのボスに教えてもらった
メモだけを手がかりに、地方のある場所に向かう道程で。
イタリアは同じ名前の通りがいくつもあって、メモの通りも同地域に
3つもあり、2つ目で何とかたどり着くまでに要した時間はおよそ3時間。
電車もない、バスも行き先が分からない、タクシーも走ってない。
ひたすら歩く、歩く、歩く。イギリス軍のトレーナーがダメになりました。
半ばゴミと化した服の山をただただ呆然と眺めた日。
超えられないものは超えられないと割り切るのか。
たとえ何も得られないとしてもあえて登るのか。
でも後者を選ぶにはあまりに時間が足りなかった。
最後の最後に、紹介されたウェアハウスでたった一枚
手に入れた古いサルトリアのジャケットを帰りの電車で
ぼーっと見ている時、一瞬だけ泣きそうになりました。
行く先々で直面する問題の一つがホテルのバスルーム。
水回りだけは極度にデリケートな性格が難点。
これはハズレの一例。シャワーを浴びるとトイレも含めて
バスルームが水浸しになる作り。どうなんですか、これ。
どうしてもヒタヒタしたトイレの床だけは虫唾が走る。
ミラノのホテルのクローゼット。
よく見ると一つとして同じハンガーがない。
これだけでホテルのクラスが知れます笑。
別に全然気にしないけどすごいね。
最終日のミラノで。数百人のサイクリストが街中をツーリング。
何かのデモか?と思ったけど、みんなすごく楽しそう。
時間が足りなくてミラノの街を回れなかったことが心残り。
早朝、肩を寄せ合いエスプレッソを飲む人たち、
ローマのテルミニ駅周辺をうろつく大勢の警察、
ボローニャ中央駅で出発を待つ美しい駅員。
次回はもっと人を撮りたい。
Just a two of us.
愛の交歓をする恋人達が街に咲く花になるイタリアの日常。
都市から遠く離れた小さな町のステーションロードで。
川の流れはバイオリンの音。
川、石畳、広場、ドゥオモ、昔のままの街並み・・・
イタリアに行く自分の背中を押してくれた映画に
ダブるシーンは、初めてでもどこか懐かしい。
イタリアのヴィンテージクローズ。
まだ知られていない服。明かされていない歴史。
扉を開けた、その先に何があるのか分からない。
新しい領域に足を踏み入れる時の、期待と不安が
入り交じったようなフィーリング。
どんなものなのか知りたい衝動と、果たしてこれが
自分の一部になるのかという心許なさ。
こんな風に思う人もいるんじゃないかと思います。
僕も何度となくイタリアでその狭間に身を置いてきました。
ロジックやセオリーではなく、心の揺れ具合が唯一の拠り所。
寒いから服を買うのではなく、ただ着たいから服を買う。
例えるならそういう選び方。数は決して多くはありませんが、
少しでも橋渡しができればいいと思っています。
6/4,11。どうぞよろしくお願いいたします。
web storeに一点だけアップしました。
イタリアのレザージャケット。
スタンダードなブラウンスエードと違い、少しシャープで
アウトローだけど、いつも着るコットンのブルゾンや
ウールのコートと同じくらい身体に心に馴染みます。
試しにTシャツの上に羽織って近所を少し歩いてみました。
僕自身あまりレザーウェアを身に付ける習慣はないですが、
着心地に抵抗を感じなかっただけでなく、上手く言えませんが
男らしさと大胆さが備わったような気分になれました。
ややタイトに、できるならパツンパツンに着るのがクラシック。
ファッションとは無縁の、着る季節も、老いも若きも問わない、
古くからあるイタリア庶民のストリートウェア。
Leather and Lace web store
明日から予告もしていきます。それではまた。