"put together"。
ニットウェアに関しては、イタリアはそこまで有名ではないです。
カシミアのニットなんかは知る人ぞ知るブランドこそあるものの、
最高級ゆえに虫に食われて後々まで残らない。
クルチアーニとかブルネロとか、上質なニットウェアを展開する
ブランドも歴史が浅く、例えばイギリスのマッキントッシュのように
元々実用服のメーカーとかファクトリーから始まったわけでもなく、
端から高級ブランドなので庶民の手に触れられてきていません。
その中で、ニットを変えた「魔術師」とまで呼ばれる、世界的に
有名なイタリアのニットウェアブランドが1つだけあります。
それがMISSONI(ミッソーニ)です。
100年を超える歴史もなければ、伝統的な技術もない中で、
豊かな色彩とパターン、それを1枚のニットの中に編み込む
"put together"という手法でオリジナルのカテゴリーを築き、
同時にイタリアらしさをも存分に表現したミッソーニ。
それが後々のイタリアのニットウェアに大きな影響を与え、
今まで手の届かなかったものが徐々に大衆の間にも浸透し、
大きな括りで"イタリアのニットデザイン"として広まったわけです。
このニットも、MISSONIがなければ生まれなかった2枚。
色彩や模様にイタリアらしさが存分に出ています。
これだけ"個"が強い色が重なりあいながら、離れてみるとクドく
見えないのは、視覚効果を計算した、ただの見よう見まねでは
作れない、技術の裏打ちがあってこそのデザインだからです。
後追いと言ってしまうと、まるで本物があってそのクオリティを
絶対に超えられないかのように聞こえてしまいますが、
実際全てのMISSONIがハイクオリティかというとそうでもなく、
僕が今回イタリアで数多くのMISSONIを見て、ただの1枚も
選んでこなかった上でのこの2枚です。
毎シーズンコレクションを発表しているにも関わらず、
今季はこれが流行るという特集でMISSONIがフォーカス
されることはあまりありません。
それはMISSONIが流行りを追っていないからでもあるし、
短絡的に派手さや突飛なものとして扱われないのは
イタリアを象徴するデザインとして十分認識されているから。
例えば古くからアイルランドにアランニットがあるように、
ガンジー島にガンジーセーターがあるように、
イタリアにはイタリア独自のニットデザインがあります。
ファッションに左右されることのないイタリアンクラシック。
季節的にどうなのかと突っ込まれると何も言えませんが汗。
では今週の1着。
イタリアは1960年代以前の服がほとんど出てこない上に、
実用的なデザインを持つ服となると更にその数が劇的に減ります。
これは1940-50'sのモーターサイクルジャケット。
地方の小さな町にある割には都市部の店よりも価格帯が上で、
デザイナーやLEONなんかに載るような感度の高い人たちを
顧客に持つショップのストックルームに入れてもらい、はしごに
上ってラックを括り、その中で手に入れた一着です。
国外に流出しやすいミリタリーウェア、ワークウェアではなく、
イタリアでしか手に入らない古いユーティリティクローズ。
アメリカにもイギリスにもない、イタリアのオリジナルデザイン。
それではまた。