”前例のある”イタリアのミリタリーウェア。
オリジナルではなく、他の国のプロダクトデザインを踏襲し
正式に採用されたという、面白いプロセスを経て作られたものを
紹介したいと思います。
最初はイタリア海軍のデッキジャケット。
言わずもがな、アメリカ軍のN-1がベースになっています。
アメリカの方が第二次大戦から朝鮮戦争までであるのに対し、
イタリア軍はそれ以降に採用されています。
おそらくアメリカ軍で正式な支給が終わってから、デザインの
ライセンスがイタリアに譲渡されたと考えていいと思います。
これはおそらく70年代頃のもの。
着丈が接ぎで長く取られ、特大のフードが付いたり、ライニングが
着脱できるようになったり、身頃を絞るためにギャザーがついたりと
よりユーティリティの高い仕様にモディファイされています。
続いて、イタリア空軍のフライングジャケット。
これも分かる人にはすぐ分かると思いますが、
アメリカ軍の低空用ジャケット、「L-2B」がベース。
タグにもL-2B TYPEとはっきり明記されています。
正式採用を70年代以降とすると、最初にL-2Bが
作られてから少なくとも20年以上は経っています。
ただこれに関しても、シェルはザラッとしたマットな
ナイロンに、またベースライニングは非常に薄く、
着脱式のウールライニングが付属したことなど、
素材に関して独自のアレンジが見られます。
最後はイタリア軍のトレーニングシューズ。
これはミリタリーウェアからではなく民間のメーカーから。
アディダスのスタンスミスがベースになっていることは
見ればすぐわかります。
製造元もイタリアのSORDINIという民間のメーカーなので
これはほとんどコピーに近いような気がします。
それが国の機関に採用されるなんてアリなんでしょうか笑。
ただ、作りはとても丁寧で、素材や耐久性に関しても
一般的なミリタリートレーナーよりも優れています。
ファッションに関しては世界の流れを牽引するイタリアが、
ミリタリーウェアにおいては他国の、前例があるデザインを
リサイクルしていたという意外な事実が分かる3着です。
今日の予告を少しだけ。
ナポリで手に入れた、ナポリのサルトリアによる
ほぼオールハンドで仕立てられたジャケット。
鈍い光沢のあるグレーのトニッククロス。
ラペルの返しがかなり下の方にあり、そこにユルさ、
カジュアルな空気が感じられるデザインです。
これも前回の予告にあったブラックのダブル同様に
かなり古いものですが、汚れもダメージも一切ない
素晴らしいコンディションで見つかりました。
もう一着。
イタリアを代表するスーツブランドであり、
クラシコイタリアの筆頭でもあるKiton(キートン)の、
1970年代頃の2Bジャケット。
キートンはナポリ発のブランドで、手に入れたのも
上のサルトリアのジャケットと同じナポリ。
カラフルなネップが入る、アイリッシュツイードを模したような、
全くイタリアらしくない生地を使った点が面白いです。
1970'sらしいクラシカルなデザイン。
今の形とはだいぶ異なりますが、この辺りのスーツに
興味がある方にとっては一つの貴重な資料として見ても
何か楽しい発見があると思います。
今日でいったんイタリアンフェアは終わり。
季節感を無視したラインナップが続きますが、
薄手のシャツなども用意します。その辺りは
時間があれば渋谷からインスタであげます。
では本日もどうぞよろしくお願いいたします。