2回に分けて、コート&ブーツを紹介します。
まずはutility編から。
実用服、実用靴として作られた5点をアップしました。
まずはこのダッフルコート。
S.E.B.(Southern Electricity Board、現Southern Electric)という、
イギリスの電力供給公社に勤めていたエンジニアに支給された一着。
タグにドンキージャケットとあります。
これは街着のダッフルコートの使い回しではなく、
元から作業着として作られているわけです。
確かに見た目はドンキージャケットそのものですね。
フードが付き、着丈が長くなっただけでベースは同じです。
まあ経緯や用途が面白いことは確かですが、
一番面白いのは洒落っ気、飾り気のないシルエット。
まず肩が落ちません。真四角ではないものの、
肩周りは広く、また角張っています。
また全体的に太い。今モノのように、身頃はデカく
袖周りは細身、なんて流行りとは無縁です。
マス層やオピニオン層、つまり普通がいい人たちや、
流行りに敏感な人たちは敬遠する形です。なので、
その層にいる自覚がある人にはおすすめしません笑。
イギリス独自のデザインを持つワークウェアが好きな人、
或いは、肩が落ちるとかもう飽きたわ、つまらんわという、
今の服じゃ満足できない人には必ず刺激をくれる服です。
次はドライバーズコート。
BRITISH RAIL、当時のイギリス国鉄に勤めていた駅員さんや
操縦士さんなど、屋外で働く職員に支給された一着。
このPコートタイプ、イギリスらしくいうならリーファータイプは
制服、つまりブレザーとしてはポピュラーなデザインではあっても、
コートとしては割と異色です。実用服だけでいえば尚更。
だいたいがシングルフロント。
ダブルでもグレートコートのような長い着丈のものがほとんど。
そもそもブラックのグレートコートなんてないと思いますが。
このコート一番の特徴は、ヘリンボーンのライニング。
なぜか鉄道物だけにみられる特殊なデザインです。
過去に1着だけこのデザインのものを取り扱ったことが
ありますが、それも鉄道物でした。
これも上のダッフルコート同様に寸胴なシルエットで、
素材も精製が甘く、不純物も残っているようなウール。
身頃をもう少しスリムにすればもっときれいに見えるとか、
キメの細かい素材なら落ち着いた雰囲気になるとか、
服作りには当たり前のことを、一切考えてない。
防寒性、コスト節約。それだけ。
単純で一途な理由から生まれた服。実用服の魅力。
コートの最後はこれ。
1940年代のシェパードジャケット。
シェパードとは羊飼いのこと。
ヒツジの国、イギリスならではの職業です。
のんびりした姿を想像してしまいますが、仕事は仕事なわけで、
上の2着に比べてだいぶ用途がプリミティブですが笑、
これもれっきとしたワークウェア。
ABBEY LEATHER AND SUEDE SPECIALIST。
イギリスのヴィンテージウェアが好きな方なら見たことあるかな?
コベントガーデンにあるVINTAGE SHOWROOMというショップが
リリースしたVINTAGE MENSWEARという本に、このメーカーの
フライングジャケットが掲載されていますね。
ワークウェアとスポーツウェアを作っていたメーカーのようで、
本に載っているのは下のMOTOR & AVIATION EQUIPMENTの方、
つまりスポーツウェアですが、このジャケットは上に書いてある
SHEPHERD GARMENTの方、つまりワークウェアです。
デザインはドンキージャケットですが、素材の質感や色など、
典型的なそれとは大きく異なります。とはいえ一般的に見たら
とても地味な違いだし、ルックス自体も本当に地味なんですが、
デザインが定まっていなかった時代に作られたドンキージャケットの、
淘汰されてしまった要素を見ることのできる貴重な一着です。
続いてブーツ。
1940年代に作られたイギリスのワーキングブーツ。
これは本物のシープスキンを内側に張り、
レザーソールではなくゴムソールを使用した、
防寒性・グリップ力に優れた実用靴です。
CC41。
結構認知度も上がってきたと思います。
知らないけど興味ある、という方はアイテムページを。
戦争で物資が不足する中、節約のために設けられた基準なのに、
CC41のマークが付く服、靴はどれもクオリティがすごく高い。
普通なら節約した分だけ品質は下がってしまうように思えます。
ですが、考え方はそうではなく、物資をケチるというよりは良い素材を
適切に使うことで、長持ちするものを作る。品質が良ければ長く使えるし、
新しいものを作らなくて済む。結果的に節約になる。そういう発想です。
品質を下げたら、一時的な節約にはなるかもしれないけれど、
すぐダメになってまた生産しないといけない。それこそムダです。
CC41、素晴らしい政策ですね。
このブーツも履き込まれた上に、70年以上も経っているのに、
革もゴムも硬化、劣化はなく、シープスキンもふかふかです。
CC41、おそろしい政策ですね笑。
最後はイギリス軍のオフィサーブーツ。
今まで何足も扱ってきたスタンダードな一足。
もうほとんど説明は不要だと思います。
貴重なsize 10のFITT 8。
デカ足の方には朗報です。
もちろんご覧の通りデッドストック。
オフィサーシューズというとサンダースが有名ですが、
こちらはDESBOROUGH SHOEという、今もノーザンプトンに
工場があり、チーニーのシューズを作っているメーカーです。
規格、つまりデザインや素材と、品質に違いはありません。
いや、むしろ品質はサンダースより上かも。
Leather and Lace web store
以上coats & boots、utility編でした。
次回はfashion編です。
明日についてはまた後ほど。それでは。