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ビスポークシリーズ。
まずはこのコートから。
1973年の11月、サリー・リッチモンドでオーダーされた一着です。
他の既成のクロンビーコートと比較しても、
ビスポークだからといって劇的な違いはありません。
ただ、グレーとかキャメルとか、ツイードとか
割と典型的な色や素材ではなく、
起毛加工されたネイビーのウール地を使用。
普通より少しだけふんわりと、少しだけ爽やかに。
これも着ている分には気がつきませんが、
見ての通り、裏地は手纏り、手纏り、手纏り。
これだけ手仕事が多い服は、そう見ません。
たとえ見た目がまったく同じだとしても、
ミシンでダーーッと一瞬で縫われたものと、
一針一針手でチクチク縫われたものと、
どちらが着たいか、温かいか、嬉しいか。
後者、という人は少なくないはずです。
見て分かる違いだけがビスポーク服の魅力ではなく、
目に見えない心地良さ、特別感もまた一つの魅力。
寒くて寒くてたまらない中、申し訳ないですがTシャツをアップしました。
まず最初の1枚。
マーガレット・ハウエル。
懐かしいロゴです。
マーガレット・ハウエルのショップがボーシャンプレイスにあった頃。
このTシャツはmid 90'sくらいかな。
まだMHLが出る前、M・ハウエルは今ほどマスなブランドじゃなかった気がします。
あくまでイメージですが、もっとM・ハウエルというブランドに特別感があった。
僕が大学生の頃は、神南にあるショップの前を横目で見ながら通り過ぎるだけで、
大人のためのブランド、働いている大人が着る服と、勝手に思っていました。
そんな当時のマーガレット・ハウエルでもこんなのあったんですね。
今のMHLトートとおんなじくらいマス向けというか、
マーガレット・ハウエルのエッセンスをまったく感じない笑。
おそらくマーガレットさんがデザインしたものではないと思います。
事実こちらはアングローバル企画のもの。
明らかにデザイナーの意向ではなく、ビジネス的なアイテム。
マーガレット・ハウエルのファンはこういうのは着ないはず。
このブランドを誇示する俗っぽさ、ちょっと品がない感じ。
例えばシャネルとかグッチとかのキッチュなロゴよりもリアルで、
ナイキとかのキャッチーなロゴよりもマニアックな面白さ。
完全マイノリティ向けの提案ですが、共感できる人いたら嬉しいです。
で、もう1枚。
ポール・スミス。
これも結構古いです。early 90'sくらいかな。
ポールスミスは今でも人気ですが、もっとすごかった頃です。
昔からポールスミスを知っている人は意外性がないかもしれませんが、
それでも今はこんなロゴTなんてリリースしないと思います。
こちらはれっきとしたイギリスの企画。ボディまでイギリス製です。
マーガレット・ハウエルのとは違って、ある意味すごくポールスミスらしい笑。
たぶん当時こんなの着てたら、敏感な人には失笑されてると思います。
その頃なら、たとえばバーバリーのマフラーくらいレイター。
時代は変わって、こんなブランドのロゴTもあまり見なくなりました。
ブランドのロゴがバーン!みたいなのをみんなが俗っぽいと認識するくらい、
ファッションの市場が成熟したんだと思います。
時代が変わり、こういったTシャツの立ち位置が変わったのもありますが、
このユルさ、かるくダサい、くらい感じって今の流れにあってる気がします。
ちなみに、ルックのジャケットはこの間アップしたGRIFFIN。
HITECのアーミートレーナーも含めて、あえてUK縛りにしてみました。
ダボッとした、当時っぽいアンダーグラウンドなスタイル。
リーファージャケット。
とだけ言われても、すぐ頭に浮かばない人も多いと思います。
ではマッキノーコートと言われたら?
ああ、あれかと、想像がつく人も多少は増えたのでは。
アメリカ軍のあのショールカラーが特徴のコートです。
それでもイマイチピンとこない、という方。
ではPコート、ではどうでしょうか?
たぶんこれでどんなものか伝わると思います。
これで分からない場合はすみません、もう大丈夫です。
リーファージャケット。
上がイギリス軍、下がイタリア軍です。
リーファージャケットは呼び方を換えればPコート。
これらはおそらくですが陸軍のものなので、陸軍のPコート、
アメリカ軍でいうマッキノーコートに該当します。
別名ジープコートなんて呼ばれたりもする防寒具です。
なので服としては実はすごく馴染みのあるものなのですが、
個体として目にする機会が全然ないのは、これらがヨーロッパでは
広く一般に着用されたものではなかったんだと思います。
イギリス軍のものは3年ぶり?くらい。やっと2着目です。
前回のものは実はイギリス人から注文があり、イギリスで買って日本に
持ち帰ってきたものが、また本国に帰還していくという珍しいケースでした。
決して安くはなかったんですが、「ずっと探してたんだ!」と
笑顔の着用画像まで送ってくれるほど喜んでくれたことを考えると、
イギリスに住んでいても見つけるのは大変なんだと思います。
分かる人はすぐ分かると思いますが、これはアメリカ軍のM43、
マッキノーコートの最終型とそっくりなデザイン。
コットン×ウールのセパレートライニングまでそのまんまです。
てっきりそのデザインを採用したのかと思いきや、
イギリス軍のリーファージャケットはM43の誕生以前からあります。
偶然同じデザインになることはあり得ないので、最終型に限っては
アメリカ軍がイギリス軍のデザインを採用したのかもしれません。
見ての通りイギリス軍だけあって、とにかく防寒性重視の作り。
袖の内側までフランネルウール。なので見た目より結構ずっしりです。
なぜアメリカ軍であれほど重宝されていたマッキノーコートが
イギリスでは人気がなかったのか。今度イギリスで聞いてきます。
イタリア軍のリーファージャケットはもちろん初めて。
大好きな街、ローマで手に入れました。
見たことはありませんでしたがデザインでピンときたので、
「Italian military?」と聞くと、店主が「Si」と。
先の通りデザインベースは同じですが、例えミリタリーウェアでも
イギリスとイタリアのテーラーウェアにそれぞれ特徴があるように、
これにもすごくイタリアらしさが詰まっています。
まずライニングが付いていません。イタリアは温暖な国なので、
イギリス軍のように分厚いウールなどはあまり必要がないわけです。
なので、見た目はボリュームがありますが、全然重たくありません。
その分、ベルトやバックプリーツ、肩の補強レザーはイタリア軍ならでは。
機能面に重点を置き、すごくよく考えられて作られていることが分かります。
また、機能面というよりは服としての美しさを重視したようなデザインも。
内側補強の曲線、縫い合わせ部分のパイピング処理など、テーラーウェアに
見られる作りをミリタリーウェアにも採用するという、これもすごくイタリアらしい
国民性とか技術とかが反映されているわけです。
イギリスとイタリア、それぞれのリーファージャケット。
読む前よりはどんなものか伝わったでしょうか?
例え同じPコート、マッキノーコートでも、どうせ着るなら
人と違うもの、誰も着ていないものを着たいという方に。
、なんてブランドはないですが、
もしVirginがアパレルやったらどうなるのか、
想像すると面白そうなのがこの2つ。
言わずとしれたイギリスの複合企業、Virgin。
Virginブランドって、企業のロゴとして見ると
デザインもイメージもけっこう評価高い方だと思います。
大企業で、高いネームバリューがある割にはそれほど
広告とかうるさくないし、ダーティーなイメージもない。
主な事業も航空とか、かつては音楽とか、流行りに敏感な層が
利用するジャンルってことも理由としてあると思います。
僕もイギリスに行く時、Virgin Atlanticを利用することが
ありますが、例えば同じイギリスのBritish Airwaysと比べると
機内はきれいだし、サービスも良く、機内食もおいしい。
BAが餓死しそうなタイミングでようやく持ってくるのに対して、
Virginはおやつとかドリンクとかの提供が多い気がします。
上はイギリスで走っているVirgin Trainsを利用した時、
無料でもらえたおやつ。普通はこんなの出してくれません。
少なくとも僕の中での印象はすこぶる良いです。
推測ですが、ベースボールジャケットはメーカー・ブランドタグが
ないので、社員向けに販促用として作られたモノでしょうか。
下はVirginのタグが付くので、メガストアとかで売ってたのかなと。
個人的にスタジャン、スウェット、ジーンズみたいなアメカジ服を
イギリスのメーカーにやられると、もうそれだけでアリなんですが、
この2つはアメリカ物をただトレースしただけのモノとは違います。
別にハイブランドでもないのに、若者が着るような服のスタジャンに、
廉価なブレンド地ではなく、100%ウールを使ってます。
完全に想像ですが、イギリスだから羊毛王国らしくあえて100%、
っていうVirgin流のジョークに思えるんですよね。色の統一感とか
銀糸の刺繍も良いですが、そんなエスプリが何よりオシャレ。
スウェットの方はなんといってもこのバルキーフィットな形。
身頃70cm・着丈57cmです。普通は逆ですよ。
服作りを専門でやってるブランドなら分かりますが、
レコード屋に置くオリジナルグッズの域は間違いなく超えてます。
サイズは実寸で見るとどちらも大きいですが、
どっちも肩は落ちますし、小柄な方にもフィットします。
モデルは身長160cm、ウィメンズのSでジャストですが、
袖は多少長いとしてもぜんぜん違和感ありません。
企業物のTシャツをハズしで使う感覚で、
マジメなスタイルに一つ加えてみるのもアリだと思います。
ドラマシリーズ「LOST」のTシャツ着てもらいました。
このジョークはオシャレじゃないな・・
働く男の服。
イギリス、ブレンドウール、コートのキーワードで3着。
上から鉄道、ミリタリー、ブルーカラー。
それぞれが仕事着として着用されたユーティリティクローズ。
見てくれとか、着心地の良さとかは最優先事項ではなく、
まず耐久性とか防寒性とか、そういうところからデザインを起こしていき、
着用者の要求、用途の特性に応えていく形で服が出来上がっていく。
特化した実用性が見た目に表れ、図らずもそれがオリジナリティになる。
図らずも生まれた現代服、ファッションクローズとのズレ。
プレーンなカットやラフなサイジング、角の削られていないディティール。
印象や流行で計算をしない、まっすぐで無垢なデザイン。
現代服、ファッションクローズの見た目、着やすさや収まりの良さばかりを
服選びの基準にすると見えなくなるものがこれらの服にはあると思います。