ビスポークシリーズ。
まずはこのコートから。
1973年の11月、サリー・リッチモンドでオーダーされた一着です。
他の既成のクロンビーコートと比較しても、
ビスポークだからといって劇的な違いはありません。
ただ、グレーとかキャメルとか、ツイードとか
割と典型的な色や素材ではなく、
起毛加工されたネイビーのウール地を使用。
普通より少しだけふんわりと、少しだけ爽やかに。
これも着ている分には気がつきませんが、
見ての通り、裏地は手纏り、手纏り、手纏り。
これだけ手仕事が多い服は、そう見ません。
たとえ見た目がまったく同じだとしても、
ミシンでダーーッと一瞬で縫われたものと、
一針一針手でチクチク縫われたものと、
どちらが着たいか、温かいか、嬉しいか。
後者、という人は少なくないはずです。
見て分かる違いだけがビスポーク服の魅力ではなく、
目に見えない心地良さ、特別感もまた一つの魅力。