何から書いたらいいのか分からないまま時間が過ぎてしまいました。
長くなりますが、ちょっとの間お付き合いください。
KATHARINE HAMNETT。
もはや知らない人はいないほど有名なイギリスのデザイナーです。
彼女が写真の中で着ているスローガンTシャツがまた盛り上がってますね。
初めて知ったのは僕が高校生の頃で、通学用のカバンを買って、
それをずっと使っていた記憶があります。
ブラックとホワイトがベースの、スリムでちょっととんがったデザイン。
日本でのキャサリンハムネットはだいたいそんなイメージかなと。
1984年のアドバタイズメント。
僕もイギリスで、初めてKATHARINE HAMNETTの古い服、
web storeにも掲載していたドリル地のアヴィエーターパンツを
手にするまではそんなイメージを持っていました。
今でこそこれがRAFをサンプルにしているのが分かりますが、
当時の僕は、これはイギリス軍..なのか?くらいでした。
でも、これ一発で今までのイメージがまるっきり覆ったのは
確かです。それくらい衝撃的な出会いでした。
KATHARINE HAMNETTは父親がイギリス空軍に勤めていた関係で、
小さい頃から父親のユニフォームに触れて育っています。
半ば英才教育のように、ミリタリーのデザインを見て、学び、
35年経ってそれが彼女のデザインとなって世に出ました。
昨日今日イギリス軍のウェアを知って夢中で探している僕らや、
サンプルに使っているデザイナー達の30年以上も前に、彼女は
それらを一通り網羅して、吸収して、咀嚼し尽くしていたわけです。
イギリスのミリタリーが好きな方にとっちゃ神のような存在です。
ただ、残念ながらその面影は、今のラインナップにはもちろん、
画像ですらほとんど確認することができません。
日本で知られるようになった頃は既にミリタリー色は限りなく薄く、
日本独自のデザインと本国のラインナップとの乖離も大きくなり、
別モノといっていいようなブランドになってしまいました。
そんな中、古い画像や雑誌を漁って情報を収集してきました。
インスタでもちょこちょこそれらの画像は上げてきましたが、
最も深く、リアルにKATHARINE HAMNETTの輝かしい
過去に触れることができたのがこの動画です。
特に1985年は衝撃的ですね・・。
幼少から父親の仕事柄、ほとんど海外で生活していた、
異文化に触れていたその影響が表れていることが分かります。
政治、環境、人種の問題に取り組み、数々のスローガンを
Tシャツにしてきた社会派デザイナーらしい一面と、
異文化、エスニックなテイストとが融合した85S/S。
鮮やかなカラーのSTAY ALIVE IN 85のTシャツは
博物館の展示品にもなるほどエピックなアイテムです。
ただ、肝心のモノが見つからないこと・・。
KATHARINE HAMNETTの初期のアイテムは
偶然を願うしかないほど手に入りません。
ディーラーに頼んでも首を横に振られるだけです。
あくまで比較した上での話ですが、例えば1930'sの
服を探す方がよっぽどカンタンだと思います笑。
ウェブストアを始めてから5年近く経ちますが、
販売した初期のKATHARINE HAMNETTは、
記憶にある限り、上のパンツとあと2点くらいです。
売らなきゃよかった、と思ってしまうので
正直なところあんまり思い出したくないです笑。
それが今回、ふとした出会いから当時のアイテムを
奇跡的に数点手に入れることができました。
ほとんどワンオーナー。当時販売されていたものを
リアルタイムで購入したものばかりです。
強く思えば叶うんだなと実感できた買付けでした。
今まで手に入れたけどリリースしなかったものも含め、
たった10点ほどですが、明日全て店頭に並べます。
ヴィンテージデザイナーズを扱う店は沢山ありますが、
KATHARINE HAMNETTをこれだけ一度に見られる
ところ、チャンスはもうないかもしれません。
ではそのうち何点か紹介します。
オーバーサイズのパラシュートシルクシャツ。
かるく引っかけただけで破れそうなほど繊細な生地で、
極端に長いテールは古いシャツのディティールです。
たぶん1985S/Sか1986S/Sだと思います。
STAY ALIVE IN 85 のTシャツもこれと同じ素材。
若き日のコリン・ファースがモデルになったショット。
彼が着ているのとまったく同じものです。
THE FACEかi-DかARENAか分かりませんが、
おそらく当時どこかの雑誌に掲載された写真。
シーズンの顔としてこのシャツを着せたことに、
ブランドとしての力の入れ様が伝わってきます。
ちなみに、これ一枚でコート2,3枚分のお値段です。
でもこれを逃したらもう買えないと思い、手に入れてきました。
初期のKATHARINE HAMNETTを象徴する一着。
コットンドリルを使ったフライングジャケット。
これはおそらく1985A/Wのショーピース。
動画にもこれと同じカラーの上下に身を包んだ集団が
ゾロゾロと歩くシーンが写っています。
KATHARINE HAMNETTの真骨頂である
ミリタリーのエレメントが濃く反映されたデザイン。
通常リアルミリタリーであればレザーやベンタイルが
使われるところ、そこをあえてドリルにしたことで
ミリタリーテイストが強調されています。
ポケットがかなり大きいのも当時の特徴。
フロント裾の小さなポケットや、バックまで長く伸びる
アジャスターなど、細部までしっかり作り込んでいます。
この解釈は誰も真似できないと思います。
今ではもう当たり前となったスウェットパンツを
ファッションクローズとして取り入れるスタイルも、
これがリリースされた頃にやっていた人がはたして
どれくらいいたんでしょうか。
ただ、イギリスにはスウェットパンツを履く習慣が
昔からないので、おそらくスポーツウェアではなく、
ロングジョンズ(アンダーウェア)をモダナイズした
デザインのような気がします。
これはおそらく1988S/Sから。
30年近く前の服とは思えない先見性。
ここまできたらもう今モノです。
シャツのようなパターン、生地を使ったコットンスラックス。
昔はこういうのもちらほらとあった気がするんですが、
今は全然見ないですね。だからといってレイターな匂いも
まったくしないのが不思議です。
やりそうでやらない。できそうでできない。
服作りに関するマーケティングは分かりませんが、
こういう服が生まれにくい今の流れの中では
ルックス以上にフレッシュな存在感があります。
Sloan Streetに移転する直前の、ブロンプトンクロスにあった
ノーマン・フォスターのブティックで購入されたものです。
1990年と言ってた気がします。初期のイタリア製。
これはたった1点だけ、イタリアで手に入れたもの。
early to mid 1990'sの、コットンカモフラージュパーカ。
ドイツ軍のTan & Waterカモがソースです、おそらく。
このデザインは素材やパターンを変えて数タイプ
リリースされていますが、これはその中でも異色の一着。
YEEZYに良く似てるなあと思って調べてみたら、
やはりこのデザインが踏襲されていました。
https://i-d.vice.com/en_au/article/why-fashion39s-eco-warrior-katharine-hamnett-is-kanye39s-main-muse
あ、リンク飛べないんだった・・。
KANYE WESTがKATHARINE HAMNETTの影響を
本人の口から告白していることが書かれています。
YEEZYのセカンドシーズンに向けて、キャサリン本人が
アーカイブを提供したことや、WESTの作品に、このパーカに
見られるようなポケットの配置やキャラメルカラーがトレース
されていることも書いてあります。
KATHARINE HAMNETTの計り知れない影響力。
YEEZYを着ている人は、こんなこと知らないはずです。
店に入ったら注目の的になるのは間違いないですね。
そんなリアクションもこれを着る楽しみの一つです。
あまり見せすぎてもつまんないのでこれで終わりにします。
どれも次があるか分からないようなものばかりです。
着ている人なんてまずいないでしょう。リアルミリタリー、
リアルヴィンテージ以上の存在感、力強さがあると、
少なくとも僕はそう思っています。
もう一点、とんでもないスペシャルもありますが、
それはここには載せません。わざわざ暑いなか、店頭まで
足を運んでくれる方だけ、直接見てブッたまげてください。
ショーで使われた音楽もダウンロード完了です。
一緒に面白さを感じてもらえたら。
ここでしか見られない服、誰も着ていない服は
何もヴィンテージに限った話ではありません。
それを見せることができればと思っています。
かなり長くなりましたが、今回の「Labels and Designs」のメイン、
KATHARINE HAMNETTを紹介しました。
時間があれば他もインスタにあげます。
ではそろそろ寝マス・・。
だいぶ告知が遅れましたが、よろしくお願いいたします。