イタリアで多く目にしたデザイナーズヴィンテージ。
ヴィンテージというと、日本やイギリスではより実用服が
フォーカスされ、何より古さ、年代がモノをいいますが、
イタリアでヴィンテージというと、ミリタリー・ワークではなく
デザイナーズ物がより高いステータスを持つ印象です。
そんなデザイナーズヴィンテージを、イタリアの旅でいくつか
手に入れてきた中から少し紹介していきたいと思います。
今回はYVES SAINT LAURENT。
1970'sのメンズラインからのミリタリージャケット。
トレンチコートのガンフラップはポケットフラップと一体化。
また、エポレット~ラグラン~ストームシールドの流れは
まるでフランス軍のモーターサイクリストコートのよう。
それに対して内側は、曲線中心のカッティングと入念な
パイピング、また腕を通しやすいよう袖だけはナイロンが
使われ、本物のテーラーウェアのような仕立てに。
前はシャツ、後ろはコート。
外はミリタリー、中はドレス。
一つの服に複数のバックグラウンドが見えるので、
着る人の着目する点によって印象が大きく変わる。
ソースが多様だからこそ、広がる世界も大きくなる。
説明にも書いたように、共産圏のユニフォームが
思い浮かんだり、シャーベットカラーに未来の色を
予感した人もいたかもしれません。
見た瞬間に元ネタがダブる服とは異なり、
平面的なカッコよさだけで完結しない奥深さは、
一流のブランドである所以の一つだと思います。
続いては1980'sのLingerieラインからのインドアトップ&ショーツ。
あまり見かけないLingerieライン。
Lingerieには下着の他に、部屋着の意味もあり、
こちらは後者の方。
自分の部屋には贅沢すぎる・・なんて思う方、
そもそもこれは贅沢な気分を手に入れるための服です笑。
決してお金持ちの普段着として作られたのではなく、
ごく普通な生活の中で少しの贅沢を楽しむ服なので、
これが似合うような豪邸を想像したところで、そんな家に
住んでいる人はまずいないし、住んでいる必要もありません笑。
とても繊細なコットンに、海を思わせるようなブルー。
例えば旅行でのホテルウェアとして、海に行った時の
ビーチウェアとして、お泊り会のパジャマとして、
ごく私的な空間を彩り、その中に身を任せるための服。
部屋着とは言っても、特別な機会に着るための服です。
帰宅途中にコンビニで買ったハーゲンダッツを
目を閉じて食べる程度の贅沢とはレベルが違います。
なんてったってサンローランですから!
ハイブランドと言われる服を何も考えず買う人はいませんよね。
もちろん似合うかどうか、買える値段かどうかは大前提ですが、
ちゃんとブランドを知り、デザイナーについて知り、コンセプトを知り、
それが一流たる所以を知ることで初めて購入に至る。
デザイナーズヴィンテージも元々は新品で店頭に並べられ、
手にとる人たちを魅了し、悩ませてきたのは現行と変わりませんが、
ブランドの手元を離れ、何十年も経っているような服について
語ってくれるデザイナーや店員さんはもういません。
なので、何様?って話は置いといて、当時の店員さんに代わり、
多少のズレはあっても笑、その服のストーリーを伝えることで、
例え過去のものでも現行と同じように、手に入れることが特別な
ことだと思えるような手助けができたらと思っています。
またデザイナーズについては後日紹介します。
長くなりましたが。それではまた。