イタリアで手に入れたヴィンテージデザイナーズ。
前回はYSLについてでしたが、今回はGUCCIです。
ヴィンテージグッチはアイテムのカテゴリーに関わらず、
イタリアのショップでも軒並み評価が高いです。
そりゃイタリア人なら誰でも高級であることは知ってるので
当たり前ですが、雑多でリーズナブルな古着屋さんですら
グッチだけはやたらと強気だったりします。
そんななか奇跡的に手に入った、
今回唯一のヴィンテージグッチ。
賛否両論ある時代、1980'sの一着です。
なぜかというのはこれから説明します。
創業から続くレザークラフトのクラシックでエレガントなイメージと、
トム・フォード以降のシャープでスタイリッシュなイメージ。
ラグジュリーブランドであることは自明ですが、
これがグッチのパブリックイメージ、かそれに近い気がします。
ただ、そのイメージに当てはまらないのが1980'sのグッチ。
異端なヤツらが最も多く存在したカオスな時代です。
こんなのを有名人が公然と着てたのもこの時代ならでは。
どこまでが本物でどこからが天麩羅か、確かな情報がない。
アンタッチャブルとして扱われるのも無理はないです。
ERIC Bが着てるのがカッコ良いかどうかは別として、
少なくともグッチのエレガンスは欠片もありません・・。
当時のグッチは、この悪魔のような笑みを浮かべた女の
登場がきっかけの一つにもなり、方針を巡る親族間の争いに
倒産も噂されるほど経営が傾いた、最悪の状態でした。
元々の高級品路線をキープしたい派閥と、
低価格商品で裾野を広げたい派閥に分かれ、
子が親を訴え、逮捕者が出るまでに発展しました。
その隙を狙ったように這い出てきた無数の贋物が
野放しにされたのも、仕方がなかったのかもしれません。
話は戻りますが、これはまさにその最中に作られた一着。
ユーティリティクローズが大胆に反映された稀有なデザインです。
全体のフォルムや貫通したアクションバックは
フライングジャケットがソースかなと。
図々しいまでにボディを横切る大きなポケットは、
ハンティングウェアの作りに重なります。
こんなバリバリにユーティリティクローズを意識した、
エレガンスの香らないグッチはこの時代だけ。
先述のパブリックイメージの範疇にないことは確かです。
ただ、こういったレザーのトリミングやパッチは
皮革製品からスタートしたグッチならでは。
更に、ボディはコットン100%、リブはウール100%と、
化繊全盛の時代でも素材選びに妥協は見られません。
ポッパーも全てGUCCI ITALYの刻印入り。
G. Gucci s.p.aは、Guccio Gucci società per azioniの略。
グッチオ・グッチは創業者(上モノクロ画像の右の方)、
そしてs.p.a.はイタリア語で株式会社の意味です。
血みどろの争いに我を失った暗黒の時代に生まれ、
贋物が無数に横行したカオスを生き抜いてきたことを思うと、
ユーティリティな表情が何だか男らしく見えてきますね。