ventileを使ったジャケット2着。
だいぶ認知度の上がってきた感のあるventile(ヴェンタイル)。
ベンタイルについては今まで何べんか説明してきましたが、
今さらネットにある歴史や経緯をコピペしても眠くなるだけなので、
もうちょっとくだけた視点から今回は攻めてみたいと思います。
下世話なハナシ、ベンタイルは価格が高いです。
高いと興味わきますよね。知らないものなら尚更。
なんでこんなに高いの?っていう。
まったくばかばかしい!けど気になっちゃう・・、っていう。
その潜在的な疑問や不満を解消するべく、
今回は、同じイギリス生まれの、よりマスに浸透してきている、
バブアーでお馴染み、「ワックスコットン」と比べてみます。
ベンタイルとワックスコットンって実は良く似ています。
100%コットン。防水、防風、寒さにも強い。機能だけでなく、
ワックスが落ちてきたら、見た目、手触りまで似てきます。
実は僕もイギリスの古着屋さんでラックを繰っている時、
ワックスと間違えてベンタイルをスルーしたことがあります。
ベンタイルを使った一着のミリタリーウェアを買ったあと
店員に「これもベンタイルだぜ」って言われて、「えっ?」って笑。
じゃあ逆にワックスコットンの違いは、というと。
ベンタイルは、コーティングや加工ではなく、
通気性に優れ、故に実生活において使い勝手が良い。
大きな違いを挙げるならそんな感じです。
まずコーティング。
ワックスコットンは、綿の上にワックスがコーティングされ、
そこで防水・防風の機能が備わるわけです。
なのでコーティングが落ちると、同時に防水機能も落ちてしまい、
その機能を復活させるにはリプルーフが必要になります。
でもベンタイルはそんなことは不要。汚れたら洗うだけ。
濡れても、洗っても、その機能は落ちません。
そして通気性。
脇下を比べると分かりやすいのですが、ワックスコットンは
空気を通さないので、例えばバブアーのジャケットとかには
必ず脇下にベンチレーションホールが空いています。
でもベンタイルのウェアにはそれがありません。
あのハトメの役割を、全て生地自体がやってくれるから。
ventileとventilation。語源にもなっている大きな特徴です。
そして実生活においての使い勝手。
ワックスコットンは、特にノリの厚いヴィンテージなんかは
経年によってベタついたり、悪臭を発する場合もあり、
人が密集するような空間では周囲に迷惑がかかることがあります。
匂いだけならまだしも、密着してワックスが人の服に
移ってしまったら大変なので、とても気を遣います。
でもベンタイルは何も移らないし、匂いもない。
いくら手で触って、鼻を擦りつけても気持ちいいだけです。
快適かつどんなケースにおいてもストレスフリーな、
究極の自然素材といってもいいわけです。
もちろんワックスコットンには独自の良さがありますし、
事実イギリスでのシェアはワックスコットンの方が断然上です。
昔から馴染みがあるし、より身近な素材だからだと思いますが、
逆になぜ、ここまで優れているベンタイルが浸透しないのか。
それは使われる長繊維のコットンが、世界の綿収穫量の
たった2%しかとれないという点にもあるはずです。
しかもそんな貴重な糸を、平凡なコットンの30%以上も
多く使います。なので大量生産が難しい。
ちなみにバブアーは、以前ここでも紹介したことのある
"the endurance"というベンタイルを使ったモデルも
過去にリリースしていますが、当時のラインナップでは
品質・価格共に最上位に位置していたそうです。
以上、ベンタイルがなぜ高いのか笑。
ちょっとでも分かってもらえたでしょうか?
で、この2着。
上は”お父さんのジャンバー”感に満ちていて、
下はその辺で売ってそうなマス寄りのデザイン。
いずれもルックスは、良くも悪くも並です。
着用のシルエットに関しても、
前者はまあ作業服と大差はなく、
後者はマス向けのカジュアルウェア風なのに
なんか不器用で今っぽさがない。
どっちもオシャレに見えるかというと正直微妙。
でも逆に、これがもし、もっとファッション寄りだったとしたら?
丈夫で、長持ちすることが保証されていて、
着るほどに表情が変わり、肌触りも優しくなっていく。
そんな素材にトレンドのデザインを乗せてしまったら、
素材の消費期限よりもはるかに早く服の賞味期限が
切れてしまうという、非常に残念なことになるはずです。
だから、ダサい方がいいとは言いませんが、
ベンタイルに関してはオシャレじゃない方が断然いい。
素材や作りは全く心配いりません。
それより見た目の賞味期限を見極める方が大事。
実用重視の、できるだけ普通のデザインを選ぶことが、
実はベンタイルを長く着るポイントです。
Leather and Lace web store
長くなりましたが。ではまた。